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資産運用技術のパラダイム転換の中心で、世界初を追求する。
学術研究と社会実装の両輪を目指して

INTERVIEW / KEI NAKAGAWA

中川慧

2018年入社

2012年4月より、資産運用会社にてリスク管理、クオンツ運用、モデル開発を経験し、2018年野村アセットマネジメントに入社。資産運用先端技術研究部にて、AIや機械学習の金融への応用のための研究開発に従事し、学術論文や受賞歴多数。2021年4月より資産運用先端技術研究部AI/機械学習チーム リサーチフェロー。

    • 資産運用の現場には、
      研究の種が溢れている

      ― 中川さんは社会人として企業に勤務する傍らで、並行して修士や博士の課程を修了したとお聞きしました。これまで歩まれてきた経歴について教えてください。

      学部での専攻は「金融工学」でした。もともと金融業界では、自然科学で得られた知見を実社会の問題解決に応用させていくという工学的な研究が盛んに取り組まれてきました。「金融工学」とは、確率解析や統計解析等に基づいて、金融市場の不確実性を踏まえた金融派生商品の価格付けや資産運用における資産配分等を定量的に行う学問分野のことです。学部卒業後は、そのまま大学院に進むことはせず、資産運用会社に新卒で入社しました。自らの取組みを学術研究だけで完結させず、それを産業応用していくためには、逸早くファンド運用の実務経験を積む必要があると感じたためです。しかし実際にファンド運用の実務を経験してみると、伝統的な金融工学にとどまらず、機械学習等の他の研究分野での手法を取り入れる意義が大きいと感じ、運用業務を行う傍らで大学院にも通い、機械学習等の統計学的・情報科学的なアプローチから新たに資産運用モデルを開発する研究に取組みました。社会人として修士課程を修了し、さらに博士課程に進む中で、野村アセットマネジメントに転職し、昨年、博士号を取得したという経緯になります。

      ― 企業へ勤めながら大学院へも通うというのは負担も大きかったと思いますが、敢えて大学院に通うことで得られたものとして、どのようなことがありましたか。

      実務と研究の往復により、両方に対して良好なフィードバックができると考えます。もともと金融工学は実務と研究の間の交流が盛んで、それが大きな魅力にもなっています。例えば、資産運用会社にはクオンツ運用といって、金融工学を始めとする数学的・統計学的な手法に基づいて定量的に運用を行う業務があります。クオンツ運用のパフォーマンスを上げようとすると、まだ市場では注目されていないデータや、他の運用者が使っていないような新しい知見を取り入れた手法を見出す必要があります。この点に関して、大学の研究室や国際会議等を通じた研究者間の交流の中で、より良いアイデアを得られる機会も多いですし、その一方で実務上の課題を運用者と議論することで、資産運用の現場での新たな研究テーマに気付くこともあります。こうした学術界と運用現場の両面から新しい手法を探究し続けることが重要という考えは今でも変わらず、修了後も学術的な活動は大切にしています。

      ― 実務と研究の往復を経て、なぜ現在は野村アセットマネジメントに在籍されているのでしょうか。

      ゆくゆくは研究に専念したいと考えていた時に、ちょうど野村アセットマネジメントの中にイノベーション・ラボという研究組織を新設するタイミングと重なり、その創設時のリーダーから「一緒に働いてみないか」とお声がけいただいたことがきっかけです。この新しい研究組織は、運用実務を担うチームともかなり近い距離にあるため、実務上の課題に根差しつつ、研究活動に専念できるこの環境であれば、これまでの研究をさらに加速させることができると思いました。

      ― 野村グループを選んだ決め手は何だったのでしょうか。

      野村グループは古くからクオンツ運用やその手法の開発に取り組んでおり、国内においてはパイオニア的存在です。また野村アセットマネジメントは、資産運用業界の中でも約70兆円の運用資産を抱える国内最大手の会社であり、米国の運用会社と資本提携する等、海外連携にも積極的で、運用力の面でも国内有数の実力を持っています。そうしたビジネスインフラは優秀な人材を集める上での強みとなり、優秀な運用チームと連携を深めることを通じて研究の質を高められると考えますし、グローバルでも成果が認められるような研究に取り組みたいと考えていた私にとって、必然的ともいえる選択でした。

    • 金融工学から機械学習へ。
      資産運用パラダイムの大転換期を迎える最前線で働く醍醐味。

      ― 現在の主な業務内容を教えてください。

      現在はリサーチフェローとして、様々な研究開発に取り組むとともに、その成果を社内外へ発信するという業務を行っています。実務的な側面としては、新しい運用商品の戦略を作ったり、現場から出てきた課題を研究から得た知見を活かして解決したりという業務です。研究という側面では、新たな手法や技術を開発したり、産学連携や企業間連携による共同研究で新しい技術の金融への応用可能性を探究したり、それらの成果を学術論文として発表したりという取り組みがあります。

      ― 資産運用に関する研究全般として、どのような状況といえるのでしょうか。

      まず研究を取り巻く環境についていえば、機械学習の応用研究は、画像処理や自然言語処理等に見られるように、既に膨大な研究事例が報告されています。しかし、機械学習の金融分野への応用となると、公表されている研究事例の数がかなり限られます。機械学習の産業応用という観点だけでいうと、金融分野の研究は一歩遅れているといえるのかもしれません。

      ― そうした状況の中で、どのような取組みをされているのでしょうか。

      資産運用実務でまだ有効性が検証されていない機械学習技術は数多くありますが、だからといって元々のモデルをそのまま適用するだけで成果が出るのかというと、そうとはいえません。これは金融データにはノイズが大きいなどの様々な特徴によるものです。そのため資産運用分野で有効性の高いモデルを開発するために、金融工学や運用実務への深い洞察に根差して機械学習モデル等を再構築するという研究に取り組んでいます。

      ― お話しできる範囲で、具体的な研究事例があれば教えて下さい。

      例えば、将来の株価推定のような時系列推定の問題に深層学習を活用しようとしたときには、株価時系列にみられる様々な特性が考慮されるように深層学習の構造自体を変えていく必要があります。一例として、過去の実証研究の中で、株価の将来リターンそのものには自己相関がみられにくいものの、それの絶対値を考えると、正の相関が見いだせるという「ボラティリティ・クラスタリング」と呼ばれる特徴が知られています。また、株価時系列を数時間単位、数日単位、数週間単位等、様々な時間スケールで見た時に、時間スケールを区別できないという、いわゆる「フラクタル性」があるといわれます。こうした株価時系列の特徴をうまく捉えられるように深層学習の構造を改良していくことで、運用のパフォーマンスを改善できることを示しました。
      また別の例として、機械学習分野には転移学習と呼ばれる技術があります。一言でいうと、あるデータセットを使って学習させたアルゴリズムを別のデータセットでの推論にも活用できるようにモデル化するという手法なのですが、これを応用して、米国などの金融市場データが豊富にある市場でモデルを学習させ、それをアジア等の利用可能なデータが限られる市場へ転移させることで、将来的な価格推定の精度が改善できるという研究も行いました。こうした転移学習では、教師データをどの程度まで学習させ、終了させるかも重要となりますが、資産運用での問題設定に合った独自の学習停止基準も併せて提案しました。

      ― これまで金融分野の研究は金融工学が中心だったのが、機械学習等の技術が取り込まれ研究の裾野が広がり、パラダイム転換が起こっているということですね。そのような中で、研究者にはどのようなことが求められるのでしょうか。

      国際学会等で新しく提案された機械学習技術は資産運用への応用事例が無いだけに、逸早く自らで試して、有効性を検証する姿勢も重要です。例えば、BERTという自然言語処理技術がブレークスルーとして社会的に注目を集めるようになりましたが、当社では、BERTという技術が登場してすぐに日本語の金融データに対応できるように改良を行い、その有効性を学会で報告しています。また昨今、注目を集めている「XAI」(説明可能なAI)についても、当社では3年前から実務的な要請から取り組んできました。ブラックボックスともいわれていた深層学習の推論において、Layer-wise Relevance Propagation(LRP)という仕組みを取り入れて、従来の金融分野で利用されていたモデルとの整合性を整理するとともに、各入力データがどの程度結果に影響を及ぼしているかを可視化するアルゴリズムを提案しました。

    • 世界最高峰の研究者たちが競い合うトップカンファレンスでも論文が採択。
      資産運用の次なるスタンダードを自ら創出していく

      ― そうした実務での研究と並行しながら、中川さんは博士課程の3年間でも10数本もの論文を発表されていたと聞きました。数本を発表すれば博士の修了要件を満たせるとされる中で、驚異的な本数です。また、その論文のいくつかは、世界最難関ともいわれるAIのトップカンファレンス「AAAI(アメリカ人工知能学会)」、「IJCAI(国際人工知能会議)」等でも採択されています。こうした学会には大学に限らず、GoogleやFacebookの企業研究所を含む、世界中のトップ研究者が論文を投稿し、金融に限らず日本全体を見渡してもそこで採択される研究の数は非常に限られると聞きました。特に前例研究が少ない金融分野で、そうした創造的な研究活動を支える仕組みが何かあったりするのでしょうか。

      イノベーション・ラボには、そうした論文発表や国際的な学会への参加などの研究活動を推奨するカルチャーがあることが一つの理由です。実際に、研究発表を奨励するだけでなく、社会人博士として専門性を高めることについても会社が制度として支援してくれています。資産運用実務の観点からは、企業としての競争力維持のために、対外発表できない研究も存在するというのが正直なところではありますが、自らの研究内容を公開することで学会等でのプレゼンスを高めて、金融の外の世界で生まれている最先端の取組みを逸早く取り入れて取り組みを発展させていくことの重要性が社内で認知されています。

      ― 最後に、これから挑戦していきたいことについて教えてください。

      ここにきて、機械学習の金融分野への応用はようやく発展期を迎え、主要な国際学会で金融をテーマにしたワークショップも開催され始めました。そうはいってもまだまだ研究事例が少なく、機械学習と金融の両方に精通した研究者の数が少ないからこそ、伸びしろも大きいといえます。これからのスタンダードとなるような独創性のある資産運用技術を、研究と実務の最前線で一緒に形作っていきたいという野心的な研究者を強く歓迎します。前例が少ないからこそ、ある種の開拓者精神が重要で、自走して研究を続けていく姿勢が求められます。多様な専門性を持ち合う研究者が相互に刺激し合い、知恵を出し合い、総力を結集して資産運用研究の最前線を一緒に切り拓いていきたいと考えています。

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    中川慧

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