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INTERVIEW / KENJIRO OYA
大屋健二郎
2007年入社
大学院で素粒子物理学を修めた後、信託銀行に入社し、年金アクチュアリーとして年金数理業務に従事。2007年3月に野村證券に入社。2009年11月から2013年3月までロンドン拠点駐在。グローバル・マーケッツ部門において、債券や金融派生商品といった金融商品の、商品開発およびリスク・マネジメントに用いられる資産評価モデルの研究開発を行っている。
― 修士課程では、どのような研究に取り組んでいましたか。
理論物理学の研究室に所属していました。物理学には様々な分野がありますが、自然現象について数学を用いて洗練された形で記述する、物理学の体系そのものに魅せられました。なかでも、その理論体系の精緻さから、素粒子物理学という極微の世界をモデル化する分野に強い興味を持ち研究の対象としていました。
― 修士課程終了後は、どのような考えで進路を選んだのでしょうか。
数理的思考を活かしたいと思い、信託銀行にアクチュアリーという専門職として新卒で入社しました。アクチュアリーとは、生命保険制度や企業年金制度などの重要な社会インフラについて、健全に運用するために必要な情報を数理的に算出する専門職です。社会的意義の高い業務であるため、意欲を持ち取り組んでいました。業務と並行して、公式資格である日本アクチュアリー会の正会員資格を取得しました。
― なぜ、転職先として野村グループを選んだのでしょうか。
アクチュアリーの資格取得後の次のキャリアを考えた際に、統計学に立脚する生命保険数理に加えて、確率論を用いる資産価格評価理論を習得したかったからです。そのためにも、実際に理論が使用されている生の現場があるビジネス環境で経験を積みたいと考えるようになりました。マーケットとの距離が近い職場を求めていた中で、野村證券の業務環境は最適に思えたため、転職を決めました。
― 現在所属している、グローバル・マーケッツ部門とはどのような組織なのでしょうか。
グローバル・マーケッツ部門とは、世界のマーケットを相手に24時間体制でサービスを提供する組織です。国内外の機関投資家などのお客様に対し、運用を中心とした複雑なニーズに応えるさまざまな商品や、それらを活用したソリューションを提供しています。
― 現在の主な業務について教えてください。
グローバル・マーケッツ部門のクオンツ・チームで、債券および金利系金融派生商品の評価モデルの研究と開発に従事しています。クオンツ・チームは、東京・ロンドン・ニューヨーク・シンガポール・ムンバイなどの拠点をまたいで協働する組織で、金融資産評価モデルを理論的に構築すると共に、プログラミングによる実装も行っています。私が所属する東京拠点は、評価モデルの研究・開発におけるコア拠点の一つとして、継続的に重要な貢献を行っています。金融資産を評価・運用するモデルの構築においては確率論や統計学、コンピューター・サイエンスの知見が必要とされるので、理論物理学を修める中で培った数理的能力が非常に活きる環境だと感じています。
― 特に印象に残っているプロジェクトについて教えてください。
「バミューダン・スワップション」という金融商品があるのですが、その評価モデルを改善するプロジェクトで成果を出せたことです。歴史のある商品だったので、評価モデルについての理論的な研究や洗練されたモデルが既に多く存在していました。それをさらに改善しようと試みるも結果が中々出ず、苦しさもありましたが、結果的にユーザーのニーズを満たす新規モデルの開発に成功しました。精査と反省を重ねながら、少しの創造性を加えることで、自分が構想した評価モデルがグローバルのビジネスを支える重要な要素となりましたが、これにはとても大きな達成感を得ました。
― 現在の業務環境について、どのような点に魅力を感じていますか?
「最終的なアウトプットを重視する」スタンスがチーム内で共有されている点です。私たちのチームの目的は、実際に売買取引を行う部署であるトレーディング・デスクに対し、金融商品の信頼性の高いプライシング(取引値段の設定)とリスク・マネジメント環境を提供し、それによりお客様のニーズやリスク特性に沿った最適な商品を、競争力のある価格で提供することです。この共通目的が浸透しているので、異なるアイデアをもつメンバー同士でも、同じ評価軸をもとに合理的に議論を行うことができ、最適な選択肢にスピーディーに辿り着けると感じます。アウトプットを出すまでのプロセスについては、個人の裁量が大きい点も魅力です。個人のスキル向上へのサポートも非常に積極的に思います。
― スキル向上のサポートとして、どのようなものがあるのでしょうか。
クオンツ・チームでは、入社後に金融基礎知識や当社ライブラリに関する導入研修が行われ、業務開始に必要となる知識を習得した後、各メンバーの適性に応じた難易度の業務に取り組みます。ファイナンスやコンピューター・サイエンスの勉強会など、座学での自己啓発も積極的に奨励されています。タスクを着実にこなすことでスキルが無理なく向上し、次第に高度な業務が行っていける環境が整っています。
― 組織の支援により実際に習得したスキルや、得られた成果について教えてください。
私は自身の専門性を向上させるために、本来の業務と並行して、金融商品評価モデルに関する論文の執筆も継続的に行っています。この活動はチームのマネージャーなどからも奨励されており、論文内容の改善につながるような有意義な議論の機会も多くあります。実績として、ファイナンス分野で国際的に著名な業界誌「Risk Magazine」に2編の論文が掲載されました。掲載時の解説文では、私自身がとても慣れ親しんだ資産評価モデルの著者の一人の方からも好意的なコメントが寄せられていて、とても感激しました。
― 業務において、最もやりがいを感じるのはどのような瞬間でしょうか。
グローバル・マーケッツ部門でクオンツとして働く私達が構築する金融資産評価モデルは、野村グループのビジネスにおいて必要不可欠であり、重要な役割を果たします。自分達で考案・開発した数理モデルがダイレクトにビジネスの結果に繋がる環境には、大きなやりがいを感じます。もちろん、実際のビジネスの現場には、理論では捉えきれない側面が多々あります。ですが、それらの要素をいかに理論と融合させ問題解決していくかというプロセスには、ビジネス現場特有の知的刺激があります。困難な課題を、チームメンバーの協力を得ながら解決した際の達成感は格別です。海外拠点との協働の中では様々なバックグラウンドを持つ社員とも触れ合うので、多くの気づきや知見が得られることも大きな魅力と思います。